- 技術向上に傾注した技術者集団 小林船舶工業株式会社 -   代表取締役 小林勇

技術習得には最低10年は必要です。しかし集中して覚えられる期間は2~5年間。ですから、まずは、特に最初の2年間を大切に・がむしゃらに仕事をするよう入社当初に言っています。
ある程度経験を積むと、慣れが生じてきてしまいます。その慣れが思わぬ事故につながりますので、よくよく注意をするようにと、いつもスタッフには言っています。そして、万が一失敗したとしても言い訳をせずに善処するようにとも言っています。仕事上で、最も大切にしている信念は、言い訳をしないこと。特に新造船から年数を経た船の修理は、どうしても新しいものと同様にはできない場合が多く、自分の言い分を吐露したくなります。そこでは、発展性のない言い訳をしたり、仕方がないと諦めたりすることなく、素直に反省することが大切です。その反省は経験として蓄積され、次の仕事に活かされていきます。
時代は流れ、ものの考え方にも多少の変化が見られますが、時代は変わろうとも若い人には若い人なりの良さがあります。ですから一概に、「今の若い者は…」とは言いません。一般的に指導する立場の者は「言っても分からない」と嘆かれているようですが、そうではなく、こちらの説明の仕方が悪いと考えるようにしています。言えば分かるし、それには分かるように説明する必要があると考えます。特に年長者は今の自分の尺度で物事を考えてしまいがちですから、自分が若い時のことを思い出して指導にあたらなければいけ無いと考えています。
技術面では、機器の発達により、従来の職人としての腕を生かした仕事が減った点は可哀相だと思います。例えばヤスリをかけたりタガネを使用することなどは、今の若い人にはなかなか経験できません。しかしながら、ある程度は機械がしてくれたとしても、エンジンの種類によって異なる修理方法を察知し、いかに迅速に対処するかは、経験を積んでいくしかありません。それが職人の腕となっていきます。船の修理には、停泊時間や予算といった決まりごとがあり、そういった様々な範躊の中で要領よくエンジン修理を行うために、急所を押さえた作業が重要になってくるのです。
納得できる仕事をするために、2~3日不眠不休で取り組むこともあります。そういった懸命の作業が成功を収め、お客様に喜んで頂けた時は非常に嬉しいものです。それにこの船舶の仕事は、うまくいった箇所は目に見えて分かりますからやりがいも感じられます。
お客様の満足のためならば、最後まで努力を振り絞る。そういったプロ意識を持つよう指導しています。
私共の姿勢がお客様に伝わっているからこそ、今日まで取引が続いているのだと思います。今後も「いつも初心に返る」という当社の信念を大切に、いくら経験を積もうとも、基礎を忘れることなく仕事に取り組んでいきたいものです。
また、現在日本では、船長や機関長以外のクルー全員が外国人という船をたくさん見かけます。世界各国の船が入港しますので、様々な国の方と接触する機会があります。その中で特に感じることは、東南アジアの人たちの技術が年々飛躍的に伸びているということです。そして、それと反比例するように、今までは高度だった我が国の技術が、徐々に落ちてきていると感じます。これは若い世代がこの業界に飛び込んできてくれないことに要因があるのではないかと思っています。ですから、当社は設備投資よりも、人材への投資に傾注し、若い人材の育成を今後の課題として頑張っていきたいと考えています。
今後とも、さらに技術向上に力を入れ、技術者集団として、これからも良い仕事をしていきたいと思います。

(雑誌掲載 インタビュー記事より抜粋)

「言い訳はしない」 たゆまぬ努力で技術向上を目指す -企業理念-

「どんな時でも言い訳はしない」
これが40年にわたって船舶業界を引っ張ってきた小林船舶工業の信念である。
職人としての経験を武器にどのような船舶のエンジンでも逸速く修理法を察知し、
納得できるまで船から離れないという粘り強さを持って完璧なまでの修理を施していく。
それが船舶ドクターたる由縁である。
しかし、その技術にあぐらをかくことなく、常に初心に返ることを胸に刻み込む。
謙虚な中にも芯の強さをもった会社であり続けることを信念とする。